京都市内の繁華街に位置するホステルの計画である。駐車場であった敷地には、解体したホテルの地下躯体が残置されていた。本計画は、この既存地下躯体を土留に利用することで、繁華街の狭い敷地で困難な地下工事をなくし、得られる地下空間を最大限に活用することをテーマとした。地下と地上の空間を一体とするため、地下レベルから鉄骨柱を建て、客室ボリュームを15m高さ規制の限界まで持ち上げた。ボリューム下の2 層分の吹抜空間をロビーとし、アプローチのスロープや屋内階段、サンクンガーデンには屋外階段を挿入し、通りからも視認できる回遊性をもたせた。吹抜内に浮遊した開放的なロビーには、サンクンガーデンの壁面緑化により地下でも潤いと前面道路からの誘目性が与えられる。浮かせたボリュームは最小化すべく、中廊下型で配列し最大効率化した客室を充填した。ボリュームの上に屋上テラスを設け、壁で囲むことにより空と緑を強調し、特別な場所としての演出を心掛けた。浮遊した黒のボリュームは夜にその存在を消す。最小表現のカーテンウォール、地下空間の環境と誘目性に配慮した壁面緑化と相まって、光あふれる吹抜空間そのものがファサードとなる建築の在り方を提案した。