コミュニケーションに関する距離の概念に「3mの輪」がある。直径3mの範囲に集まれば、無理なく会話が生まれ、一体感のあるコミュニケーションが取れるという考え方である。住宅は様々にデザインされ供給されているが、コミュニケーションの距離感に基づいてデザインされた家はない。
そこで、内向きの輪である「3mの輪」を少しだけ外向きに拡張した「4.5mの輪」を内包する家を提案する。これにより、家全体の気配や一体感を感じながら、個人が家族や地域との関係を「距離感」で柔軟に調整できる。
「4.5mの輪」という新しい距離感に対応する空間を「みんなの部屋」と呼び、家の中心に配置する。「みんなの部屋」の中心から「4.5mの輪」を描くと各諸室の一部が取り込まれるように設計されている。この距離感により、みんなの部屋と周りの諸室が繋がり、新しい使い方が生まれる。「みんなの部屋」がリビングと繋がりより広いリビングになったり、キッチンや大きな玄関と繋がり、ご近所さんとのパーティルームにもなったり...。
個室間を壁ではなく、距離感で仕切る。「4.5mの輪」が緩衝帯となり、家族の気配を感じつつ独立性の確保された個室となる。みんなの部屋の四周は可動間仕切りとし、各部屋との繋がりを制御する。扉を閉じれば個室のプライバシー確保することができる。
住み手は家族や地域との繋がり方をその時々で選択して、思い思いに住まいを変え、様々なライフスタイルを満足することができる。