この敷地は、背面に大きな公園が隣接する丘陵地に位置する。 丘陵地では通常、宅地造成により駐車場が基壇、その上が住宅の構成、いわば「HILL TOP」となる。閑静だが、周辺の環境から切り離されてしまう。 ここでは、基壇の法面そのものを住宅「HILL SELF」として、起伏に富む周辺環境が建物内部まで自然に連続するような佇まいを考えた。
敷地の法面を起こすと、法面が外壁となり、屋根となり、スラブとなり、建物内部まで丘陵地が引き込まれ、緩やかに繋がる山道のような一体的な空間が得られる。大小様々なスペースが様々な距離感でつながる空間は、互いの存在は感じられるが、一度に全体を見通すことはできない。自然に生まれた場所には、決まった使い方は無いように、寝そべったり、腰かけたり、駆け上がったり、自分の居場所を探し、想い想いの使い方ができる空間となっている。
丘を模した曲面は、空間の連続性だけでなく、光の移ろいと相まって内部に豊かな表情を作り出す。法面を隆起させて丘自体を家にする「HILL-SELF」により、どこか懐かしくも新しい洞窟のような住まいを目指した。