摂津本山のデンタルクリニックエントランス

 間口が狭く奥行きの深い、いわゆる鰻の寝床形状の敷地に建つ個室型の歯科クリニックである。国道2号線に面し、建物の背面には六甲山系を望むことができる。敷地の奥性を活かして、長いトンネル状の空間をつくり、3つのヴォイドで繰り抜くことで、長屋形状の待合、診療室、処置室を配置した。

 前面道路に面するヴォイドは、宙に浮かせている。門型6mのコンクリートキャンチレバーにより、国道の騒音のバッファーゾーンとしての役割と、まちとの自然な接続に配慮した。このキャンチレバーと縦長の採光スリット、国道に向かって突き出た16mmの鉄板庇により赴きあるファサードを目指した。

 診察室間の二つのヴォイドは、内部に光を導入する中庭であり、診察室と待合に適度な距離感を生み出す。診察室をつなぐトンネルに処置用の家具を配置し、仕切りのない見通しのきく診療所ができあがる。 上階のスタッフルームと院長室は、将来の予備室でもある。中心に配置した院長室は、住まいとして活用されているが、将来、診察室への変更を見越して高い天井としている。この大開口からは緑豊かな六甲山を望むことができる。

 トンネル状の空間と3つのヴォイドにより、将来を見据えた長屋形式の個室型のクリニックの佇まいを提案した。