京都特有の間口の狭い狭小地に建つ高層建築の在り方について考えた。

周辺は、大通りに面するが間口が狭く、高層化ができずに低層の建物が連続する。この変形狭小地で技術的に高層化を可能にすれば、上空では裏側のボリュームまでも通りに顔を出し、建築全体が存在感を示す。眺望も確保され特徴的な宿泊施設にできる。間口の狭い狭小地において高層化する構造体とそれに合わせた建築がテーマとなった。

上空で敷地境界ギリギリに配置された柱は、基礎や杭地業の隣地との離隔のため、足元では内側に倒れながら接地されなければならない。これを合理的に達成するには、スパンと梁せいが大きくなっても、柱を敷地の角に配置し、柱数を最小限に抑えることが最善となる。

上空では建築の裏側までも全方位から見える在り方を求めた。東や北の弱い光にも反応する金属塗装を施したパネルを様々な角度に配し、全体を覆うことで時間や天候により微妙に異なる姿を目指した。足元から上層階に向け、客室の黒、グレー、白と段階的に変化する色彩もこの見え方に寄与することを企図している。

足元は斜めに交錯する柱の力強さを活かすべく、歩行者は無論、車からでも視認できる大きな明かりを浮遊させ、通りの人が明かりの下に自然に居場所を感じる空間とした。